| 毎年この時期になるとかしわ餅が食べたくなってくる。
いつもならどの店のを買おうかなどと悩む所だが、
今年はちょうど良いタイミングでかしわ餅をいただいた。
しかも餅の部分には甘みの付いていない私好みのかしわ餅。
おかげで苦労することなく堪能するまで食べさせていただくことができた。
かしわ餅に限らず、餅菓子には固くならないようにするために砂糖が加えられることがある。
私がこの甘いかしわ餅や団子を嫌いなことは以前にも述べたが、
ではいったい何が餅を固くしているのだろうか?
かしわ餅の餅や多くの団子はうるち米から作られている。
生の米に含まれているでんぷんはβでんぷんと呼ばれ、
でんぷんの分子が集まって結晶構造を成している。
この状態のでんぷんは非常に消化吸収しにくいので、
食べるためには充分な水と温度を加え、ばらばらにほぐれた状態にする必要がある。
この状態のでんぷんをαでんぷんと呼ぶ。
αでんぷんはばらけた状態であるために消化酵素が働きやすく、
口に含んだ時に唾液で糖質に変わりやすい。
そして柔らかい。
これこそが炊きたてご飯がつきたての餅の美味しさと言うわけだ。
一旦α化したでんぷんをそのまま放置すると、
でんぷんに含まれている水分が抜けて元の結晶状態に戻り、
ふたたび消化吸収しにくい状態になってしまう。
冷えたご飯や固くなった餅が不味いのも当然と言える。
再結晶がもっとも進みやすいのは水分30〜60%で2℃前後の時、
冷蔵したご飯が美味しくないのもこの理由による。
逆に再β化しにくいのは水分が極めて少ない時、または多い時、
そして温度が氷点下の時、または温かい時。
ご飯を保存する場合に保温や冷凍すること、
乾燥させた状態にしたおせんべいが長期保存できるのも同じ理由である。
おそらく砂糖は水分を保持することででんぷんの再結晶化を抑えているのだろう。
和菓子だけではなく、このでんぷんの相は洋菓子にも深く関わっている。
特に顕著なのはシュークリーム。
生地に充分に火を通してα化させた状態のまま焼き上げることで、
あのシュー独特の姿が生まれることになる。
しかしこれらの理由付けはすべて近代になってからのもの。
難しい理屈付けが不明でも、先人たちは経験からこれらの事実を突き止め利用していた。
まさに努力の賜物と言えよう。
改めて先人たちの努力に敬意を表したい。 |