| 私とバターケーキの出会いはかなり昔に遡る。
私が中学生になった当時、うちにコンベックがやってきた。
当時は最新型だったそのオーブンに付属していたレシピ本に載っていたのがパウンドケーキ。
そのレシピでは卵黄と卵白を分けてバターに加え、
説明文には”バター生地を膨らませるのはバターに含ませた気泡”だと書いてあった。
私としても当然その作り方しか知らないわけで、
同様のレシピはアニーズのレシピとしてもかなり初期にアップしている。
その作り方に変化があったのはつい最近のことだ。
いろいろなレシピ本やWebで公開しているレシピでは
必ずと言っていいほどかき立てたバターに全卵を加えている。
それでは、とこの方法を試していきなり壁にぶつかってしまった。
『卵が混ざらない・・・』
ところがこの分離しかけた生地で作っても、
最終的には同じようにふっくらと焼き上がる。
バターケーキを膨らませているモノとはいったいなんなのだろうか?
生地に含まれる油分と水分が混ざるのは
界面活性効果を持つ物質が素材に含まれているためだ。
バターや卵黄ではレシチンやコリンなどのリン脂質がそれにあたる。
界面活性剤は起泡や乳化などに対して高い効果を発揮するので、
水分と油分を含んだ生地を乳化し、
さらに、かき立てることで多くの空気を含ませることができる。
これによってバターケーキは水分と油分が馴染み、
かつ、膨らんだ状態に焼き上がることとなる。
自然界には界面活性効果を持つ物質は非常に多く、当然卵白にも含まれている。
ところが卵白に含まれている界面活性剤はアルブミンのようなアミノ酸であり、
バターなどのリン脂質とは性質が異なっているようなのだ。
ここからは憶測に入ってしまうので大変申し訳ないのだが、
この二種類の界面活性剤が効果を相殺している可能性は否定できない。
バターと卵黄だけならば、大量に含まれている界面活性剤が油分と水分を馴染ませ、気泡も保持している。
ところがそこへ加わった卵白由来の界面活性剤が本来の効果を相殺し、
それでも無理やり乳化させようとすればするほど
かえって気泡を消すことになっているのではないかと思われるのだ。
過去私が行った何回かの試作結果もこの推察を肯定しているようだし、
知人からも同様の報告を受けている。
結果としてバターケーキを膨らませているのはバターと卵黄が作る気泡であり、
分離する原因は卵白にあるようだ。
あらかじめ卵黄と卵白をその役割ごとに分けて使う私が昔から行っていたレシピは、
ある意味真実を突いていたとも言える。
さんざん回り道をした揚げ句に元のレシピに戻ってしまうのは皮肉なことであるが、
これでひとつ手順の持つ意味を突き止めたと思えば遠まわりの意味もあったような気がする。
これで次からは失敗がなくなる・・・といいなあ。(^^; |