| もう10年近く前のことだろうか、ある日ガムを噛んでいた私は、味のなくなったガムをどうするべきか悩んでいた。
不幸なことにそのガムの包み紙は手元になし、ティッシュペーパーもなし、このまま吐き出すわけにもいかず、悩んだ揚げ句に思いついたのがポケットに入っていたキャンデー。
『そうか、このキャンデーを食べれば包み紙が空くな』
そうして包み紙をむいてキャンデーを口に放り込んで気が付いた。
『このままガムと一緒に噛み砕けばガムに味が付くかも?』(笑)
噛み砕いてみると確かにガムにキャンデーの味が付いた、一石二鳥とはまさにこのことである。
そうしてふたたびそのガムの味がしなくなり、ポケットに残っていた別のキャンデーを口に入れる。
噛むにつれ次第に歯ごたえのなくなるガム。
そのうちに歯や舌にまとわりつくガム。
気が付いた時は既に遅し、しばらく口の中がべとついていた。
今になって思えば確か一度めの時にもガムが柔らかかったような気がしたのだ。
あの時にやめていればと心底悔やまれる。
その時は原因も何もまったくわからず、不思議なこともあるものだと感心していただけだったのだが、つい最近になってようやくその原因らしき事実が判明した。
話は変わるが、父は歯があまりよくない。
既に抜いてしまった歯も相当な数にのぼり、10年以上前からは歯ぐきで支えるタイプの入れ歯を利用している。
最近はその歯ぐきも痩せてきたようで、すき間を埋めるためにシートタイプの入れ歯安定剤を使うようになった。
しかし父はこれがあまりお気に召さないらしい。
聞くと『使っているうちに溶ける』からだそうだ。
あらためて安定剤の説明書を読むと、食品添加物によって溶けることがあると記載されていた。
そして天啓のように閃いた。
そうか、これがガムを溶かした原因だったのか。
この入れ歯安定剤の成分は”ポリエチレングリコール”、ガムベースとして使われている”チクル”とは性質が異なるが、双方とも高分子化合物の一種である。
この高分子の鎖をキャンデーに添加されている成分のうちの何かが切ったに違いない。
その話を家族にしたところ、キャンデーだけでなくチョコレートでもガムが溶けると聞いた。
こちらはどうもチョコレートに含まれている油脂がチクルの溶剤として働くためらしい。
ガムベース、入れ歯安定剤、どちらにしても本来は体に摂取されないことを前提として作られている。
不快なだけではない、体のためにもケチな根性は起こさない方がよろしいようだ。 |