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香りのスタンダード
ブルーチーズ
もうかなり前のことになるが、ある時バニラエッセンス入れ忘れのプリンを家族に振る舞った。(処分させたとも言う

一口食べた辛党の父曰く。
『卵の臭みを消すためにはバニラエッセンスを入れた方がいいぞ』

そ・そんなことを何故知っている?(笑)


卵の匂い消しにバニラはお菓子好きなら誰でも知っているだろうが、カスタードクリームを作る時に砂糖と卵黄を白っぽくなるまでかき立てるのも匂い消しの効果があるそうだ。
また、以前某製菓学校の教授に話をうかがったところ、卵の匂い消しにはバニラエッセンスばかりでなく、他の香料、もしくは香りの強い素材を使うだけでも構わないらしい。

ところが最近では卵の風味を活かすため、これをあまり混ぜないパティシエさんもいるのだと言うだから実にややこしい。


同様のことは粉でも起きる。

香りの良いパンを焼くには強力粉を良く練り上げることが必要だ。
パンに使う強力粉にはグルテンが多く、水分を加えて練ることでこのグルテンが結合してあの独特の香りを産み出す。
イーストの香りとグルテンの香り、このふたつの香りが良いパンの条件だろう。

ところがスコーンやマフィンで生地を練ってしまうと『粉くさい』ケーキとして嫌われてしまう。
同じ香りが条件が違うだけで正反対の評価を受けることになる。


大体に於いて強い香りほど好き嫌いが激しいもので、納豆などはその代表格だろう。
同種の菌を使った発酵食品であるウォッシュタイプのチーズも『匂いが強い』と言って嫌う人、大好きな人と様々である。

青かびが生えた餅を好む人はさすがにいないようだが、同種のカビを使って作るブルーチーズにも熱狂的なファンがいる。

極め付けは韓国のエイの刺し身。

軟骨魚は血液中に尿素を含むため、しめた後放置するとこれが分解してアンモニアを生じる。
そのためエイやサメなどの硬骨魚は新鮮なうちに血抜きなどの処理をしなければならない。

ところが韓国の一部の地域ではあえて放置・貯蔵してアンモニアを発生させてから刺し身にして食べる。
一口食べると口と言い鼻と言いあのつんっと来るアンモニアの香りが充満し、食べ慣れない人はむせること必至。
私としては匂いの強い食べ物の双璧のうちひとつとしてこのエイの刺し身を挙げたい。





閑話休題

要は香りには好き嫌いがあるのだから、卵の風味を残そうが匂い消しにバニラエッセンスを使おうが個人の好み次第と言うことだ。
もちろんより多くの人に好まれる風味、いわゆる”スタンダード”は存在するはずだけどね。
 

世間の風評に流されず、できうることなら先に挙げたパティシエさんのように”スタンダード”を作り出してみたいものだ。


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2001/10/27 update