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ひしゃげた人形焼
人形焼
まだ私が小学生のころ、近所の商店街へ行くたびにある古びた店に寄って人形焼を買ったものだ。
七福神の顔をかたどり、かなり甘いあんをたっぷり入れたその店の人形焼は私の大のお気に入りだった。

割と薄めの皮にもしっかりと甘みが付き、あんの砂糖が染み出したややひしゃげた感じの顔は無気味な中にも愛敬があり、(笑)
浅草や東京駅などで”お土産”として売られている大量生産品とは一味違う、まさに東京名物と呼んでいいお菓子だったと思う。


数年前、その店で改装工事が始まった。
単なる改装と思っていたらなぜか仮店舗が二ヶ所にある。
そのうちに完成したのはほとんど同じ商品を売る半分の敷地の二店舗。
その異様な感じは私の購入をためらわせるに充分であった。

巣鴨で同じ系列の店を見つけ、そこで購入がてら聞いた話ではどうやら代替わりに失敗したらしい。


人形焼で思い出すのはなぜか阿刀田高。
彼のホラー短編に人形焼の登場する話がある。

読んだのはもうかなり前のことになるので詳しくは覚えていないのだが、人形焼をぞんざいに扱ってつぶしてしまった主人公が交通事故でつぶれると言う、まああまり趣味の良い話では無かったと思う。

しかし、人形焼がつぶれやすいのはあんの部分が大きいためであり、決して品質が悪いためではない。
中央にほんのちょっぴりしかあんの入っていない人形焼など、いくらつぶれていなくとも食べて美味しいものではない。


最近この店の片一方が店名を変更した。
七福ならぬ六福だそうな。
気になって調べてみると確かに福禄寿どのがいらっしゃらない。
おそらくは単に顔の長い福禄寿ではサイズが違ってしまうためなのだろうが、もしかすると不老長寿の神様として知られる福禄寿をないがしろにした報いが現在の状態なのかもしれない。

新しい店の人形焼はどれも昔のようにつぶれてはいなかった。
昔ほど皮が薄くなくなったのが原因ではないかと思う。

笑顔のはずの人形焼がなぜか泣いているように見えた。


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2001/07/07 update